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ノバちゃんの誕生日は1959年の秋。高島屋のキャラクター人形として創作されたものだ。
以来、かわいらしく、お茶目でキュートな雰囲気で高い人気を得て、「ローズちゃん」の愛称も賜り、現在にいたっている。
戦後のベビー・ブーム後期に生まれた子供達も就学年に達しはじめ、社会の高度成長を背景に、新しい価値観が次々に芽生え、人々に受容されていった時代で、この年に生まれた流行語には、ファニー・フェイスやトランジスタ・グラマー、セクシー・ブーム、ステージ・ママなどがある。
ノバちゃんことローズちゃんは、そんな時代背景を反映して、兄弟姉妹に相当ずる多くのバリエーションを登場させた。そしてクリスマス衣装をはじめ、季節毎に特徴ある衣装を身につけて、イメージ・キャラクターとして、店頭で販売促進の推進役を果たしてきた。
相変わらずの幼児姿で35年余り。ロング・ラン人気のマネキンとして、今日を迎えているというわけだ。
「アー。びっくりした。人がいるのかと思った」
観光地などを見学していて、時々、耳にする言葉だ。
わが国の生活レベルが向上して余裕が生まれたことが第一の要因であることはいうまでもないが…1970年秋の国鉄の販売促進キャンペーンの「ディスカバー・ジャパン」にはじまり、フル・ムーン旅行、そして、もっとも近い過去では80年代の“故郷興し”なども反映して、旅行・観光フームは、形を変えながらも相変わらずの人気だ。
そして観光地で大活躍しているのが、その地に伝わる物語や各地の生活様式、風習などを具体的に見せるためのマネキンだ。
時には公家や武家人などを再現したものもあれば、絣の着物を着た子供たちが勢揃いしているもの、そして、当時の苛酷な労働者など、様々なリアル・ライフを表現ずるためにマネキンが起用され、観光客をタイム・トリップに誘う。
時代は、代わっても人形が人間の代理を務めるという図式は同じなのですね。
「アナをあける」といってもボタン・ホールでもなければ、障子の穴というわけではなく…'80年代のキャリア・ウーマン・ブームのころのマネキン製作現場でのお話だ。
キャリア・ウーマンを象徴する表現のひとつに“たばこを吸う女”のイメージが強調された時代。マネキンを製作する立場では、よりリアルに、自然な表現をするために、口元に、たばこをくわえさせるアナを空けたい。
しかし、マネキンの流用性を考慮すると、それは困るというわけで、ケンケンガクガク(とまではいかなかったようですが…)の話し合い。いわば、制作現場と営業の立場との違いをみせるヒトコマだ。
結果的に“アナはあけられなかった”ということだか、街で何気なく見ているマネキンも、見えない所では、そんな細かい配慮がされているンですね。昨今の禁煙ムードのなかでは、懐かしいお話でもありますが…。
そのマネキンに着せれば売れる。つまり下手な販売員より効果的に服の魅力を訴求し販売に結び付くマネキンがいた。いや「いる」というべきなのかもしれない。
商品訴求が、昔のように単純ではなくなり、総合的なイメージ訴求でディスプレイされるなど、売り場に直結しない場合も少なくない。
招き猫ではないけれど、マネキン自体が持つ“運”“不運”のようなものがあるのかもしれない。しかし、それ以上に、人間とマネキンの関係があるのではないだろうか。
扱う商品とマネキンが大好きで、センスのある販売員がいた、とすれば当然、魅力的なコーディネートをマネキンに装わせるだろう。
一時期「マネキン否定論」みたいな風潮もあったが、単にハンガーに掛けてあるよりも、物理的にも、イメージ的にもマネキンが着ているほうが目立つし、素人には理解しやすい。それが魅力的なら自ずと良い方向に循環していくであろう。要は、無機質の物体といえども、それに相対する人間の質や心象が投影されてくるのではないだろうか。とマァ、素人は思うのでずが…
「子供達の未来のために、地球環境を大切に」というメッセージを託したのであろうか…東京・青山にある「コム・デ・ギャルソン」ショップの店頭に、個性的な子供のマネキンがズラリと並んだのが、1994年の7月のころ。
この子供達は、マネキンを登場させ、写真に新たなジャンルと神話を生み出した、として世界に知られるフランスの写真家ベルナール・フォコンと9年間の生活を共にしてきたマネキンたちだ。
B・フォコンが「年をとることのできない運命と年をとる運命は共存できない」と感じたとき、彼の元での役割を終えたマネキン83体は、1990年に「永久保存」を約束されて、七彩に引き取られた。
その少年達が、「コム・デ・ギャルソン」の店頭に、ディスプレイされ、再生したというわけだ。
利かん気の顔、腕白そうな顔、利発そうな顔、甘えん坊の顔……様々な表情とポーズの子供達は、見る人を、しばし幼児時代へとタイムスリップさせ、優しさに浸らせる。
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