コラム

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マネキンのリアリティを考える 戦後日本のマネキンの流れを通して

はじめに

1960年代のリアルマネキン(義眼つき)
1950年代の楮製紙製マネキンの製作風景

マネキンは主として商業空間において、衣服を着せて見せ、販売を促進するための等身大の人形である。

その役割ゆえに、時代とともに変化する社会や人々の意識を投影させつつ、その姿かたちを変える、人形世界において、極めて特異な存在と言えよう。

本稿では、日本人の衣服が和装から洋装に転換を遂げた戦後10数年と、大量生産大量消費の高度経済成長期から低成長期へ、さらにはバブル期と崩壊以降の五つの特徴的な状況に焦点をあてながら、著しい変化を遂げた20世紀後半の日本社会に、マネキンはどのように対応してきたか、
さらには社会と密接に関わる人形=マネキンのリアリティとは何かを筆者が40余年勤務したマネキン企業七彩の事例を中心に考察する。

著者: 京都造形芸術大学 ものづくり総合研究センター 主任研究員 藤井秀雪
※この文章は日本人形玩具学会「人形玩具研究 かたち・あそび」第18号 2008 年3月に発表したものの転載です。