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益子良栄
デザインルームマスコ・代表
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第1回「ジューンブライドに心がときめく」
1 ガーデン 写真[1][2]
今年の春、ウィンドー演出の新しい仕事を引き受けた時、まずお世話になったマネキンに、もう一度出演してもらおうという考えが湧き起こった。独特のリアルなポーズで、渋い演技をしてくれた役者たちに、今までどれだけ助けられてきたことだろう。あのマネキンたちは、今でも無事に活躍しているだろうか?あらゆる面でリストラの行われている現在、たいへん心配になった。
マネキンを選ぶ時は、カタログによるイメージ出しから始める。実際の現場ではいろいろ制約条件があって、力夕ログのイメージを越えることはなかなか出来ないが、総合的なイメージ訴求は、マネキンという役者を使用するにかぎる。とくにメインストリートに位置するウィンドーにおいては、役者(マネキン)と街行く人達との相乗効果をねらいたくなる。
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マネキン各社のカタログには、時代の流れの中で商品PRの役者として、都会のトップステージで演じるマネキンが次々と現われてくる。存在感のある京屋、ファッションをよく着こなしてくれる吉忠、元気が出るヤマト、身近なシーンの表現にはトーマネ、クリエイティブな表現には七彩、変化にほどよく対応する平和、フレキシブルなモードC等々―長い間マネキンを扱ってきた私の頭の中には、そうした先入観がある。いや、あったと言い直すべきかもしれない。
各社とも誌面では、時代の要求に合わせたVP(ビジュアル・プレゼンテーション)を、みごとに展開している。際立った先鋭性をもったメインステージ用、標準化を重視した平場対応、それらを総合化した売場のVPは、役者としてのマネキンも含めて、最高の鮮度で演出されている。でも、差違化が見えてこない。欠点が是正されるのと併せて大きな特徴も消え、平均化して見える。
最近のウィンドーは、街行く人達の日常的な本音と対話してくれる役者(マネキン)を使用している例が少ない。先鋭的であることイコール禁欲的という図式になっていて、静的で非彩色だ。クリエイター達は、ストイックであればあるほど、トレンドのファッションを着こなしてくれると信じこんで、ある種の気取りにはまり込んでいるようだ。
今日の低迷から抜け出す自力を持たせるために、マネキンという役者の力を再び借りることにした。往年の名優たちの行方は、マネキン会社の営業担当者に聞いても、工場に問い合わせても、不明であったが・・・・・。
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第2回「ジューンブライドに心がときめく」
2 マリン 写真[3][4]
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新しいウィンドー・ディスプレイのモチーフは「スタジオ」と決めた。この設定ならウィンドーいっぱいに季節の背景を作り込まなくても、象徴的な造形一つ二つで充分だし、マネキンのポーズも無理なく組み合わせが出来る。後はマネキンが、どこまで演じてくれるか・・・・・。
日常の中にある時代の本音・本質をよく見極めて仕事をすすめないと、総合的なイメージ訴求にはならない。日常をはるかに越えた非現実的な事件が続いている今日、人々は少々の表現では見向きもしないでポーカーフェースだ。しかし内面では“本当のリアリティ”を欲しがっている。そこにインパクトしたかったのだ。
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第3回「自然の中で思い出をつくる夏休み」
1 リゾート“エスニック” 写真[5][6]
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思いっきり喜びに満ちあふれた、街行く人達の心を開いてくれる役者に出演してもらった。旅先の楽しさを最高の喜びとして骨太に演じてくれ、前を行く人々に相乗効果を及ぼしていた。
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第4回「目然の中で思い出をつくる夏休み」
2 リゾート“ヨーロッパ カントリー”写真[7][8]
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心を一つにして屈託なく笑わせてみた。とくに子供マネキン(子役)は撤去後も、なぜか余韻が残った。
子供が子供であるだけで可愛いように、子供マネキンもチャーミングだ。東京の原宿ディア・キッズ(子供服専門ビル)のKPというショップの路面ウィンドーと売場をディスプレイした時、それまで 使っていたオリジナルの板マネキンに代えて、子供マネキンを使って演出を試みた。
ここのウィンドーは奥行き、高さともぜいたくなスペースがとってあり、そのため子供マネキン数体だけでは負けてしまう。そこで背景と床に連結性を出し、マネキンの足元を床から少し上げる ことを考えた。また、服そのものが着て遊んでいる姿がかわいく絵になる服が多いので、動作 マネキンを使って、遊びのシーンを演出した。
このウィンドーと店内の売場ディスブレイとを連動させることで、ウィンドー・ディスプレイの意義も大きくなる。ベビーマネキン一体を使って、ショップのフロントとつなげた。またカラーダンボールをふんだんに使って、カジュアル気分と遊びのムードを演出し、あわせて 低予算も実現した。
子供服売場は顧客との会話がとくに重要。楽しい会話のきっかけを常に用意しておく必要がある。ウィンドーとショップ・フロントにチャームポイントがあれば、販売員がお客との会話をリードし、コントロールしやすくなる効果も大きい。
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ダンボールで遊園地
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子供マネキンの可愛さの根源は何だろう。
もうずいぶん前にブリュッセルへ行った時、グラン・プラスの南、エチューブ通りで初めて本家本元の小便小僧を見た。意外に奥まった場所で、つつましく放物線を描いているこの坊やは、340着の衣裳持ちだそうだ。ベルギーに侵攻したフランスのルイ15世によって一度奪われたのが返却された時、豪華な公爵の衣裳が添えられて以来、世界各国から衣裳がプレゼントされたという。
東京のJR浜松町駅のホームの坊やも、衣裳は増え続けているそうだ。こちらは、ある雪の日に毛糸の帽子をプレゼントされたのが最初とか。昭和27年(1952年)の製作で、1619年生まれの本家・小便小僧にはもちろん及ばないが、それでも30数年の歳月、人々の愛情を受け続けている。
小便小僧は子供の可愛さの原点を持っているからだろう。ちなみに小便小僧は「マネキン・ピッズ=MANNEKIN PIS」と現地では名付けられている。MANNEKINとは“小さな男の子”という意味だが、マネキンの語源という説もある。
子供服メーカーではオリジナルのマネキンを持っているところも多い。小さな子供をあたたかく 衣服でくるんであげたい―それが子供服の原点ということか。そうしたマネキンの中の一点か二点を、シンボルとして永久使用に耐える物として作るというアイデアはどうだろうか。 売場にマネキンが一体あると、視界が立体的になるという効果は見逃せない。今はハンガーや壁面ピンナップが主流だが・・・・・。
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