マネキンの全て

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マネキンのすべて

ビジュアルプレゼンテーションの中のマネキン

ダンシング・マネキン

“エレガンス”をテーマにしたインポート物中心の商業施設。訴求年令層はかなり幅広いので、モチーフはスタンダードにした。ウィンドーは建物の二階部分に位置し、曲面に沿った構造で、奥行は短い。ウィンドーのねらいは、来店客へのウェルカム・プレゼンテーション。横を通過する電車の中からも見て取れる明快さが要求された。

そこで「花」をモチーフに、アクティブな造型と、そのリピートによるリズム感を出して、ホテルに 隣接したしゃれた建物自身の表情、たたずまいを生かした表現を心掛けた。

〈施設〉新横浜プリンスペペ
〈時期〉グランドオープン(1992年3月)

花シリーズ・その1
「ウェルカム・ダンシング」

陽春のヴィヴィッドな色の輪、遠目にも躍動を感じさせる点にポイントをおいた。この場合ポーズマネキンの選択次第で効果が大きく左右される。そこで回転ポーズを選んだ。花のようなマネキン、花のコスチュームを自然に浮き出させるマネキンがあるのだ。

花シリーズ・その2
「ホワイト・サマー」

ポピュラーな花“カラー”は、初々しい少女のイメージと、品のよいレディのイメージと、両方を持っている。この白を引き立てる色として緑と青にしぼり(色数を少なくして)訴求効果を上げた。マネキンは初回より動きを押さえたポーズの物を選び、カラーの詩情と初夏のさわやかさにフィットさせた。

マネキン=招(マネ)金(キン)という説

全館モチーフとして、カレンバーバ(ニューヨーク)のイラストを採用。リニューアルの目玉である、白いエントランスホールもそれに連動して、「大人の夢」をテーマに三越らしい豊かなヴォリューム感と、全館テーマ「GINZA・STYLE」にふさわしい洗練を表現した。エントランスは客を招き福を招く しつらえをしたいもの。その意味でもゆったりとふくよかな人形は、ぴったりだった。人形製作は布製きめこみで、布はフォーマルウェア用の高級な素材を使用。

人形の客招きについては、面白いエピソードがある。モノの本によると、我が国のマネキン黎明期に、フランス語のマヌカンにするか、英語のマネキンにするが論争があったそうだ。ところが、資生堂の 白川虔之氏が「マヌカン」(招かぬ)よりマネキン(招金)の方が縁起がいい」と主張したため、マネキンになって今日に至っているわけである。

人形でもマネキンでも、顔があるものはすべて表情がある(無表情も含めて)、百貨店の場合キープしておきたい客層は多様である。置いてあるマネキンの種類も多様である。顧客はマネキンの顔つきで、自分との相性を判断しているケースも多い。また、ファッションを目的としてない買物客も、エスカレーターの上などから、ファッションフロアを眺めて通り過ぎる。そういう場合は、マネキン群の表情がサブリミナル効果のごとくに定着して行く可能性大である。

〈施設〉銀座三越〈時期〉リニューアル・グランドオープン(1990年)